聖歌点描(1)


  天使のミサ曲 神田教会のミサでは、「典礼聖歌」集の「ミサ曲2(207〜210)」が、通常奉唱されています。これは石川和子シスター(東京純心女子大学・特任教授、グレゴリオ聖歌研究家)が作曲されたもので、日本古謡の趣を秘めつつ、親しみやすい旋律とやさしい和声づけで、多くの教会で愛唱されているようです。

  一方「典礼聖歌」集にはこの他7種のミサ曲が用意されており、さまざまな曲が時と場合に応じて、各地の教会で歌われています。実際には、慣習的に一つの曲に固定されてしまい、ミサ曲といえばこれだ、と思われている方も多いと思われます。しかし、それでは何かもったいない気がします。

  長い教会音楽の歴史からみれば、この「典礼聖歌」集によって、1970年代に新たに加えられた邦語によるミサ曲の他にも、優れたミサ曲が無数にあることはご承知の通りです。残念ながらそれらの曲のほとんどはラテン語の典礼文によっているため、今日ではほとんどの教会で歌われていませんが、幸いなことに神田教会では、その宝庫の中の1曲である「天使ミサ(Missa de Angelis)」が、クリスマスやイースターのミサで歌いつがれています。

  この曲は、古くからの日本の信徒になじみ深いもので、第2ヴァチカン公会議の典礼革新による、典礼文の国語化以前の教会では、広く用いられていたものです。正式には「天使の祝日に用いるためのミサ曲」という意味で、16世紀に作曲されたものと考えられています。グレゴリオ聖歌の曲としては、従ってかなり新しいもので、調性も古い教会旋法によらず、ヘ長調で記譜されています。

  「カトリック聖歌集503番」では、現代式の5線譜で、ニ長調に移調して印刷されていますが、それは現代の一般会衆の人々にも歌いやすいように工夫されたものでしょう。曲想はいかにも天使の歌にふさわしく、旋律は1オクターブ(8度)の音域をあまねく駆けめぐり、天の高みで主を讃美している情景をほうふつさせます。そのため、グレゴリオ聖歌としてはかなり高めの音が続き、低声の人には歌いづらいかもしれません。が、それこそ守護の天使に導かれ、躍動感をもって高らかに歌い上げたいものです。

(文責 K.O.)